カスハラ対応で現場が言ってはいけない言葉、言うべき言葉|初動対応で会社を守る伝え方

カスハラ対応では、現場担当者の最初の一言が、その後の対応を大きく左右します。

お客様に落ち着いていただくために言った言葉が、後から「会社が認めた」「約束した」「責任を取ると言った」と受け取られることがあります。

反対に、正しいことを言っていても、伝え方が強すぎると、お客様の怒りをさらに大きくしてしまうこともあります。

現場に必要なのは、お客様に迎合することではありません。
また、現場担当者が一人で判断し、すべてを解決しようとすることでもありません。

大切なのは、会社として確認すべきことは確認し、約束できないことは約束せず、必要な段階で管理職や本部に引き継ぐことです。

本記事では、カスハラ対応の初動で現場が言ってはいけない言葉、言うべき言葉について、実務上の注意点を整理します。

なお、カスハラに当たるかどうかの基本的な考え方については、

関連記事「カスハラとは何か|定義と正当なクレームとの違い、判断のポイント」

で整理しています。

目次

カスハラ対応では、なぜ現場の言葉が重要になるのか

現場の一言が「会社の回答」と受け取られることがある

カスハラ対応で現場の言葉が重要になるのは、その一言が「会社としての回答」と受け取られることがあるからです。

たとえば、現場担当者がその場を収めるために「こちらが悪かったです」「必ず対応します」「責任者に厳しく言っておきます」などと伝えた場合、後からお客様が「会社が非を認めた」「対応を約束した」と主張することがあります。

もちろん、現場が誠実に対応することは大切です。

しかし、事実確認ができていない段階で、責任の所在、返金、補償、処分、特別対応などに踏み込むことは避けるべきです。

現場担当者の一言が、後から会社全体の対応として扱われる可能性があることを意識しておく必要があります。

録音・録画・SNS投稿を前提にした対応が必要になる

現在のトラブル対応では、やり取りが録音・録画されている可能性を前提に考える必要があります。

現場担当者に悪意がなくても、発言の一部だけが切り取られると、会社側の対応が不適切だったように見えることがあります。

特に、お客様に対する感情的な反論、お客様を否定する言葉、事実確認前の断定的な発言には注意が必要です。

カスハラ対応では、お客様を言い負かすことではなく、会社として説明できる対応を残すことが重要になります。

現場担当者を守るためにも、言葉の基準が必要になる

現場担当者に「うまく対応しておいて」と任せるだけでは、担当者はその場の判断で対応せざるを得ません。

その結果、必要以上に謝ってしまう、できない約束をしてしまう、反対に強く言い返してしまう、といった対応が起きやすくなります。

そもそも現場担当者は、「どう対応すればよいのか分からない」からこそ、上司や会社に判断を求めています。

これは、担当者個人の能力だけの問題ではありません。

会社として、どのような言葉を使うべきか、どのような言葉を避けるべきか、どの段階で上司に引き継ぐべきかを決めていないことにも原因があります。

現場担当者を守るためにも、会社として言葉の基準を整理しておくことが重要です。

現場が言ってはいけない言葉① 事実確認前に責任を認める言葉

避けるべき言葉の例

事実確認ができていない段階では、次のような言葉は避けるべきです。

・こちらが完全に悪いです。
・当社のミスです。
・担当者が悪かったです。
・私どもの責任です。
・すべてこちらで対応します。

このような言葉は、現場担当者としてはお客様に落ち着いていただくために使っている場合もあります。

しかし、お客様からは「会社が責任を認めた」と受け取られる可能性があります。

なぜ問題になるのか

事実確認ができていない段階で責任を認めるような発言をすると、後から会社の正式な判断と食い違うことがあります。

また、お客様から「会社が非を認めた」と受け取られ、返金、補償、謝罪、担当者の処分など、要求が広がることもあります。

事実確認前にこのような発言をしてしまうと、発言したのが現場担当者であっても、店舗や会社としての回答と受け取られてしまう可能性があります。

もちろん、お客様が不快な思いをしたことに配慮する必要はあります。

しかし、お客様に対する感情への配慮と、会社として責任を認めることは分けて考える必要があります。

カスハラ対応では、お客様の感情を受け止めながらも、事実確認前に責任の有無を断定しないことが重要です。

また、お客様の要求内容がどこから社会通念上許容される範囲を超えるのかについては、

関連記事「カスハラ【言動の内容編】『要求内容』が社会通念上許容される範囲を超えるのはどんな場合か

で詳しく整理しています。

言い換えるならどう伝えるか

責任を認めるのではなく、まず確認する姿勢を示すことが大切です。

たとえば、次のような言い方が考えられます。

・ご不快な思いをされた点については、まずお話を確認させていただきます。
・事実関係を確認したうえで、会社として必要な対応を検討いたします。
・現時点では詳細を確認できていないため、この場で責任の有無までは申し上げられません。
・まずは、どのような経緯だったのかを確認させてください。

大切なのは、受け止めることと、責任を認めることを分けることです。

現場が言ってはいけない言葉② できない約束をする言葉

避けるべき言葉の例

現場担当者が、その場で判断できない内容について約束することは避けるべきです。

たとえば、次のような言葉です。

・必ず返金します。
・必ず責任者から謝罪させます。
・すぐに処分します。
・今回だけ特別に対応します。
・ご希望どおりにします。
・必ず上に伝えて対応させます。

その場を収めるために言ったつもりでも、後から「約束した」と受け取られる可能性があります。

なぜ問題になるのか

現場担当者が会社として決めていない対応を約束すると、後で「話が違う」というトラブルにつながります。

特に、返金、補償、処分、特別対応については、現場判断で約束すべきではありません。

また、一度特別対応をしてしまうと、その後も同じ対応を求められることがあります。

他のお客様との公平性の問題も生じます。

現場担当者ができるのは、要望を聞き取ること、事実関係を確認すること、必要に応じて上司や本部に引き継ぐことです。

対応内容を決定することとは分けて考える必要があります。

現場で判断すべきことと、管理職や本部に引き継ぐべきことを分ける考え方については、

関連記事「カスハラ対策はなぜ必要か|社内の役割分担と現場対応の基本

でも解説しています。

「承る」と「約束する」は違う

現場で大切なのは、お客様の要望を無視しないことです。

ただし、要望を聞くことと、その要望どおりに対応すると約束することは別です。

「ご要望として承ります」
「対応可能かどうかは確認いたします」
「この場でお約束することはできません」

このような言い方であれば、お客様の話を受け止めながらも、会社として未確定の対応を約束せずに済みます。

カスハラ対応では、「聞いたこと」と「約束したこと」が混同されないように注意する必要があります。

言い換えるならどう伝えるか

できない約束を避けるためには、次のような言い方が考えられます。

・ご要望として承ります。
・内容を確認したうえで、対応可能な範囲を会社として判断いたします。
・この場でお約束することはできませんが、確認のうえ、必要な対応をご案内します。
・対応できるかどうかについては、会社として確認いたします。

このように伝えることで、お客様の要望を無視せず、同時に不用意な約束を避けることができます。

現場が言ってはいけない言葉③ お客様を否定・刺激する言葉

避けるべき言葉の例

お客様の発言が事実と違う場合でも、言い方には注意が必要です。

たとえば、次のような言葉は避けるべきです。

・それは違います。
・そんなことは言っていません。
・普通はそういう対応はしません。
・他のお客様はそんなことを言いません。
・警察を呼びますよ。
・訴えますよ。
・こちらにも言い分があります。

これらの言葉は、内容として間違っていない場合でも、お客様を刺激することがあります。

正しい内容でも、言い方によって事案がこじれることがある

トラブル対応では、こちらの説明が正しい場合でも、伝え方によってお客様の怒りを強めてしまうことがあります。

特に、お客様の発言をその場で否定したり、論破しようとしたりすると、話の中心が本来の苦情内容から感情的な対立に移ってしまいます。

現場対応では、お客様を言い負かすことが目的ではありません。

事実関係、要求内容、対応可能な範囲を整理することが重要です。

元刑事として多くのトラブル現場を見てきた経験からも、その場で言い負かそうとする対応は、かえって事案を長引かせることが少なくありません。

正しいことを言う場合でも、お客様を否定する言い方ではなく、事実関係を整理する言い方に変えることが大切です。

暴言・侮辱・威圧的な言動がある場合の判断については、

関連記事「カスハラ【ケース判断編①】暴言・侮辱・威圧はどこから許されなくなるのか

で具体的に整理しています。

警察・法的措置を安易に持ち出さない

暴力、脅迫、退去拒否、業務妨害のおそれがある場合には、警察への相談や通報が必要になることがあります。

しかし、現場担当者が感情的に「警察を呼びますよ」「訴えますよ」と言うと、お客様を刺激し、かえって事案が悪化することがあります。

警察への相談が必要な場面では、脅し文句として使うのではなく、安全確保と業務継続のための判断として、会社の基準に沿って対応することが重要です。

警察を呼ぶべき場面と、警察という言葉を出すべき場面は同じではありません。

この点を現場担当者に理解してもらうことも重要です。

警察に相談すべき場面や通報判断の基準については、

関連記事「カスハラ対応で警察に相談するのはどんな場合か|通報判断の基準を整理する

で詳しく解説しています。

言い換えるならどう伝えるか

お客様を否定するのではなく、認識の違いや確認内容を整理する言い方にします。

たとえば、次のような表現です。

・ご認識と当社で確認している内容に違いがあるようですので、事実関係を整理させてください。
・その点については、確認できている内容をもとにご説明いたします。
・ご意見としては承ります。ただし、当社として対応できる範囲には限りがあります。
・そのような言動が続く場合は、安全確保のため、対応方法を変更させていただくことがあります。

重要なのは、お客様の人格を否定するのではなく、問題となっている事実や行為に焦点を当てることです。

現場が言ってはいけない言葉④ 担当者個人で抱え込む言葉

避けるべき言葉の例

現場担当者が一人で抱え込むような言葉も避けるべきです。

たとえば、次のような言葉です。

・私が何とかします。
・私の責任で対応します。
・上には言わないでください。
・私だけで対応します。
・もう少しだけ話を聞きます。

一見すると誠実な対応に見えるかもしれません。

しかし、カスハラ対応では、現場担当者が一人で抱え込むこと自体がリスクになります。

現場担当者が抱え込むと、長時間拘束につながりやすい

カスハラ対応で避けたいのは、現場担当者が一人で抱え込んでしまうことです。

お客様の話を聞き続けるうちに、対応時間が長くなり、通常業務に支障が出ることがあります。

また、担当者が精神的に追い込まれ、不用意な発言や過剰な謝罪につながることもあります。

現場担当者が「自分が何とかしなければならない」と思い込むと、管理職への報告や本部への共有が遅れます。

結果として、会社としての対応開始が遅れ、事案がこじれることがあります。

同じ説明を繰り返し求められる場合や、対応時間が長くなっている場合の考え方については、

関連記事「カスハラ【ケース判断編②】繰り返し要求・居座り・長時間拘束をどう判断するか

で整理しています。

権限を超える内容は、早めに引き継ぐ

返金、補償、謝罪、担当者の処分、特別対応などは、現場担当者だけで判断すべき内容ではありません。

現場の権限を超える要求が出た段階で、管理職や本部に引き継ぐ必要があります。

引継ぎは、現場担当者が対応を放棄することではありません。

会社として対応するための切替えです。

むしろ、早めに引き継ぐことが、現場担当者を守り、会社の対応を安定させることにつながります。

言い換えるならどう伝えるか

現場担当者が一人で抱え込まないためには、次のような言葉が使いやすいです。

・私だけで判断できる内容ではありませんので、責任者に引き継ぎます。
・会社として確認が必要な内容ですので、上司に共有します。
・これ以上は現場で判断できないため、責任者からご説明いたします。
・安全確保のため、複数名で対応いたします。

このような言い方であれば、お客様を拒絶するのではなく、会社として対応する姿勢を示すことができます。

現場が言うべき言葉① お客様の話をまず受け止める言葉

お客様の話を聞く姿勢は示す

カスハラ対応であっても、最初からお客様を拒絶する対応は適切ではありません。

正当な苦情が含まれている可能性もあるため、まずは何が問題になっているのかを確認する必要があります。

そのため、現場では、お客様の話を聞く姿勢を示す言葉が必要です。

ただし、話を聞くことは、お客様の主張をすべて認めることではありません。

受け止めることと認めることは違う

注意すべきなのは、お客様の話を受け止めることと、お客様の主張をすべて認めることは違うという点です。

「お話は確認します」
「ご意見として承ります」
「事実関係を整理します」

このような表現であれば、お客様の話を聞く姿勢を示しつつ、責任や補償をその場で認めることを避けられます。

カスハラ対応では、お客様の感情への配慮と、事実認定や責任判断を分けて考える必要があります。

使いやすい言葉の例

現場で使いやすい言葉としては、次のようなものがあります。

・ご事情を確認させていただきます。
・どの点についてお困りなのか、順番に確認させてください。
・まず、事実関係を整理させていただきます。
・ご不快に感じられた点については、受け止めました。
・ご意見として承ります。

このような言葉であれば、お客様の話を聞く姿勢を示しながらも、不用意に責任を認めることを避けることができます。

現場が言うべき言葉② 対応できる範囲を示す言葉

現場で即答できることと、確認が必要なことを分ける

現場対応では、その場で回答できることと、会社として確認が必要なことを分ける必要があります。

すべてをその場で回答しようとすると、権限を超えた判断になりやすくなります。

反対に、何も答えない対応では、お客様の不満が大きくなることもあります。

そのため、現場では「確認できる範囲」と「確認が必要な範囲」を分けて伝えることが重要です。

対応できないことは、理由とともに伝える

対応できない内容については、単に「できません」とだけ伝えると、お客様の反発を招くことがあります。

その場合は、会社のルール、事実確認の必要性、公平性、安全確保など、対応できない理由を簡潔に伝えることが大切です。

ただし、長い説明を重ねすぎると、議論が続きやすくなります。

説明は簡潔にし、同じ内容を繰り返し求められる場合は、管理職への引継ぎや対応終了の判断につなげる必要があります。

使いやすい言葉の例

対応できる範囲を示すときは、次のような表現が使いやすいです。

・確認できる範囲でご説明いたします。
・当社として対応できる範囲をご案内します。
・この場で判断できる内容と、確認が必要な内容を分けてご説明します。
・ご要望は承りますが、対応可否については会社として確認いたします。
・その内容については、現場では判断できないため、責任者に確認いたします。

現場担当者が対応できる範囲を示すことで、お客様の要求に流されず、会社としての対応に切り替えやすくなります。

現場が言うべき言葉③ 行為をやめてもらうための言葉

暴言・大声・威圧的な言動には、早めに注意する

暴言、大声、威圧的な言動がある場合、現場担当者が我慢し続ける必要はありません。

最初の段階で、落ち着いて話してもらうように伝えることが大切です。

ここで重要なのは、お客様を非難する言い方ではなく、行為をやめてもらう言い方にすることです。

「あなたは迷惑です」と人格を否定するのではなく、「大きな声での発言はお控えください」と行為に焦点を当てて伝えることが重要です。

注意しても続く場合は、対応終了の可能性を伝える

注意しても暴言や威圧的な言動が続く場合は、対応を継続できない可能性を伝える必要があります。

この段階では、「そのような言動が続く場合は、対応を継続することが難しくなります」と、会社の基準に沿って伝えることが重要です。

現場担当者の感情で言い返すのではなく、対応ルールに基づいて伝えることがポイントです。

それでも改善されない場合は、対応終了、退去要請、警察相談などを検討する段階に入ります。

使いやすい言葉の例

行為をやめてもらうための言葉としては、次のようなものがあります。

・大きな声での発言はお控えください。
・他のお客様のご迷惑になりますので、落ち着いてお話しください。
・そのような発言が続く場合は、対応を継続することが難しくなります。
・暴言が続く場合は、対応を終了させていただくことがあります。
・安全確保のため、責任者に引き継ぎます。

このような言葉を事前に決めておくと、現場担当者が感情的に言い返すことを防ぎやすくなります。

段階を決めて伝えることが重要

カスハラ対応では、いきなり強い言葉を使う必要はありません。

まずは落ち着いて話してもらうよう依頼し、それでも改善されない場合に、対応継続が難しいことを伝えます。

さらに暴言、威圧、退去拒否、業務妨害のおそれがある場合には、対応終了や警察相談も検討することになります。

たとえば、次のように段階を決めておくと、現場で対応しやすくなります。

第1段階:落ち着いて話してもらうよう依頼する
第2段階:続く場合は対応継続が難しいことを伝える
第3段階:対応終了、退去要請、警察相談を検討する

重要なのは、担当者個人の感情ではなく、会社として定めた基準に沿って対応することです。

現場が言うべき言葉④ 管理職・本部に引き継ぐ言葉

引継ぎは「逃げ」ではなく、会社対応への切替え

管理職や本部への引継ぎは、現場担当者が対応を放棄することではありません。

現場の権限を超える要求や、暴言、威圧、長時間拘束がある場合には、早い段階で会社としての対応に切り替える必要があります。

これは、お客様への対応を整理するためだけでなく、現場担当者を守るためにも重要です。

現場担当者が一人で抱え込むほど、事案は長引きやすくなります。

引き継ぐべき場面を決めておく

会社としては、どの段階で管理職や本部に引き継ぐのかを事前に決めておく必要があります。

たとえば、次のような場面です。

・返金、補償、処分、特別対応を求められた場合
・暴言や威圧的な言動が続く場合
・同じ説明を繰り返し求められる場合
・長時間対応になっている場合
・現場担当者が恐怖や負担を感じている場合
・退去拒否や業務妨害のおそれがある場合

このような場面では、現場担当者だけで対応を続けるべきではありません。

早い段階で管理職や本部に引き継ぐことで、会社としての判断に切り替えることができます。

ただし、現場から引き継いだ後の管理職対応にも注意が必要です。

管理職が初動で避けるべき対応については、

関連記事「カスハラ対応で管理職がやってはいけない初動対応

で整理しています。

使いやすい言葉の例

管理職や本部に引き継ぐ場合は、次のような言葉が使いやすいです。

・この内容は現場で判断できないため、責任者に引き継ぎます。
・会社として確認が必要な内容ですので、担当部署に共有します。
・これ以上は私の権限では判断できませんので、責任者からご説明いたします。
・安全確保のため、複数名で対応いたします。
・このまま対応を続けることが難しいため、責任者に代わります。

このように伝えることで、現場担当者が一人で抱え込むことを防ぎ、会社としての対応に移行しやすくなります。

会社が事前に決めておくべき「言葉の基準」

使ってよい言葉と避けるべき言葉を整理する

現場対応を安定させるためには、会社として、使ってよい言葉と避けるべき言葉を整理しておく必要があります。

特に、謝罪、補償、返金、処分、特別対応に関する言葉は、現場担当者の判断に任せるべきではありません。

あらかじめ言い換え例を用意しておくことで、現場担当者は落ち着いて対応しやすくなります。

「何を言ってはいけないか」だけでなく、「代わりにどう言えばよいか」まで決めておくことが重要です。

現場対応を個人任せにしないためには、対応マニュアルの中で、言葉の基準や引継ぎ基準を整理しておく必要があります。

マニュアル整備の考え方については、

関連記事「カスハラ対応マニュアルはどう作るか|会社が最低限決めておくべき項目

で解説しています。

謝罪の範囲を決めておく

謝罪については、何に対して謝るのかを明確にする必要があります。

たとえば、「不快な思いをさせたこと」への配慮としての言葉と、「会社に法的・事実上の責任があること」を認める言葉は異なります。

この区別が曖昧なまま現場に任せると、必要以上に責任を認めたように受け取られることがあります。

会社としては、現場が使ってよい謝罪表現と、責任判断を含むため使うべきではない表現を分けておく必要があります。

対応終了・警察相談に切り替える言葉も決めておく

暴言、脅迫、退去拒否、業務妨害のおそれがある場合には、対応を終了したり、警察に相談したりする必要があります。

その際に、現場担当者が感情的に伝えるのではなく、会社として決めた言葉で伝えることが重要です。

たとえば、次のような表現です。

・そのような言動が続く場合は、対応を終了します。
・安全確保のため、責任者に引き継ぎます。
・業務に支障が出ているため、対応方法を変更します。
・安全確保のため、警察に相談する場合があります。

このような表現を事前に整理しておくことで、現場担当者が迷わず対応しやすくなります。

言葉の基準はマニュアルと研修に落とし込む

言葉の基準は、作って終わりではありません。

現場担当者が実際に使えるように、対応マニュアルに記載し、研修やロールプレイで確認しておく必要があります。

カスハラ対応では、知識として知っていることと、実際の場面で言えることには差があります。

だからこそ、会社として、現場が使える言葉まで具体化しておくことが重要です。

また、実際の現場で使えるようにするには、マニュアルを作るだけでなく、管理職や現場担当者への研修も重要です。

まとめ:カスハラ対応は、個人の話し方ではなく会社の危機管理である

カスハラ対応では、現場担当者の言葉が事案の流れを大きく左右します。

大切なのは、お客様の話を受け止めながらも、事実確認前に責任を認めないこと、できない約束をしないこと、感情的に反論しないことです。

また、現場担当者が一人で抱え込まず、必要な段階で管理職や本部に引き継ぐことも重要です。

会社としては、現場任せにするのではなく、使ってよい言葉、避けるべき言葉、引継ぎの基準をあらかじめ整理しておく必要があります。

カスハラ対応は、個人の話し方の問題ではなく、会社として従業員を守るための危機管理です。

カスハラ対応に不安がある方へ

カスハラ対応では、現場で何を断り、どこまで説明し、どの段階で上席判断に切り替えるかを、あらかじめ決めておくことが重要です。
シールド社会保険労務士事務所では、カスハラを含む不祥事・危機対応について、初動対応の整理や社内フロー整備を支援しています。

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刑事15年・人事労務10年の経験を融合。「刑事の眼」と「実務目線」を併せ持つ社労士として、ハラスメント等の組織トラブル解決を専門としています。

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