カスハラ対応時の記録の残し方|後から会社を守るために何を記録すべきか

カスタマーハラスメント対応では、現場でどのように対応するかと同じくらい、「何を記録に残すか」が重要です。
その場では、暴言を受けた、威圧された、長時間拘束された、怖い思いをしたという印象が強く残ります。しかし、後から会社として対応方針を決めるためには、「怖かった」「ひどかった」という感覚だけでは足りません。
いつ、どこで、誰が、何を言い、何を要求し、会社側はどのように対応したのか。
このような事実が記録として残っていなければ、会社は後から正確に判断することができません。
カスハラ対応記録は、単なるメモではありません。
従業員を疑うためのものでも、形式的に残すだけのものでもありません。
後から会社が事実を確認し、対応方針を判断し、従業員を守るための重要な資料です。
特にカスハラ対応では、通常のクレーム対応から始まったものが、途中で暴言、不当要求、長時間拘束、退去拒否などに発展することがあります。そのため、最初から結論だけを記録するのではなく、どのような経過で問題が大きくなったのかを時系列で残すことが重要です。
この記事では、カスハラ対応記録に何を残すべきか、事実と評価をどのように分けるべきか、そして記録を会社の判断や従業員保護にどう活かすべきかを解説します。
カスハラが発生した直後の対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→カスハラ発生時の初動対応|最初の一言・記録・報告で会社の対応は変わる
カスハラ対応で記録が重要になる理由
記録がなければ会社は事実確認できない
カスハラ対応では、後から会社が判断しなければならない場面が必ず出てきます。
この対応を続けるのか。
責任者対応に切り替えるのか。
対応を終了するのか。
外部専門家や警察に相談するのか。
従業員へのフォローが必要なのか。
このような判断をするためには、具体的な事実が必要です。
記録がないままでは、会社は「何が起きたのか」を確認できません。
現場担当者が「怖かったです」「すごく怒鳴られました」と報告しても、それだけでは会社として判断しにくい場合があります。
もちろん、対応者が怖い思いをしたことや、強いストレスを受けたことは重要です。
しかし、会社として対応方針を決めるためには、もう一歩踏み込んで、具体的に何があったのかを確認する必要があります。
たとえば、次のような点です。
- どのような発言があったのか
- どのような要求があったのか
- どのくらいの時間対応したのか
- 会社側は何を説明したのか
- 相手はその説明にどう反応したのか
- 途中で要求や態度が変化したのか
- 証拠となる録音、映像、メール、SNS投稿などがあるのか
これらが記録されていなければ、後から会社が事実関係を整理することは難しくなります。
記録は、現場の感覚を会社の判断材料に変えるためのものです。
カスハラ対策マニュアルに盛り込むべき項目については、こちらの記事で解説しています。
→カスハラ対策マニュアルの作り方|現場で迷わない対応ルールを整える方法
記録は従業員を疑うためではなく守るためのもの
記録というと、現場の従業員は「自分の対応をチェックされるのではないか」と感じることがあります。
たしかに、カスハラ対応記録には、会社側がどのように対応したかも残します。
しかし、それは対応者を責めるためではありません。
カスハラ対応記録は、対応者の落ち度を探すためのものではなく、会社が状況を正確に把握し、従業員を守るために残すものです。
記録がなければ、会社は従業員を守りたくても、何を根拠に対応すればよいのか分からなくなります。
顧客から後日、違う内容の主張をされた場合。
SNSや口コミで一方的な投稿をされた場合。
従業員が強いストレスを受け、勤務に影響が出た場合。
同じ顧客から繰り返し要求を受けている場合。
このような場面で、記録があるかどうかは大きな違いになります。
記録は、従業員を疑うためではありません。
従業員を一人で抱え込ませず、会社として守るために必要な資料です。
記録が会社を守る場面
カスハラ対応記録は、目の前の一件を処理するためだけのものではありません。
後日の説明、従業員保護、外部専門家への相談、再発防止のすべてに関わります。
たとえば、次のような場面で記録が重要になります。
- 顧客から後日、異なる主張をされた場合
- SNSや口コミで一方的に書かれた場合
- 従業員が休職・離職につながった場合
- 警察・弁護士へ相談する場合
- 同一人物による繰り返し行為を確認する場合
- 店舗や部署ごとの発生傾向を把握する場合
- 社内研修やマニュアル見直しに活用する場合
記録がなければ、会社は「言った・言わない」の状態になりやすくなります。
また、対応者が受けた負担を会社が正確に把握できず、必要なフォローが遅れることもあります。
記録があるからこそ、会社は次の一手を判断できます。
カスハラ対応では、発生した事案をその場限りで終わらせるのではなく、記録を通じて会社の対応力を高めていくことが重要です。
カスハラ対応記録に残すべき基本項目
発生日時・場所・対応者
まず記録すべきなのは、いつ、どこで、誰が対応したのかです。
これは基本的な事項ですが、後から確認すると意外と曖昧になりやすい部分です。
「午後だったと思う」
「長時間だった」
「受付付近だった」
「たぶん店長もいたと思う」
このような記録では、後から正確に状況を確認しにくくなります。
できる限り、次のような項目を残しておく必要があります。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 何月何日、何時何分頃から何時何分頃まで |
| 発生場所 | 店舗、受付、電話、メール、SNS、訪問先など |
| 対応者 | 氏名、所属、役職 |
| 同席者・目撃者 | その場にいた従業員、警備員、他の顧客など |
| 対応方法 | 対面、電話、メール、チャット、SNSなど |
特に重要なのは、開始時刻と終了時刻です。
「長時間だった」という記録だけでは、後から判断しにくくなります。
30分なのか、1時間なのか、2時間なのかによって、対応の重さは変わります。
できる限り、開始時刻と終了時刻を残しておくことが重要です。
顧客等の主張・要求内容
次に、顧客等が何を主張し、何を求めていたのかを記録します。
カスハラ対応では、相手が怒っていたかどうかだけではなく、何を求めていたのかが重要です。
正当なクレームであれば、会社として誠実に対応する必要があります。
一方で、要求内容が不当であったり、要求を実現するための手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えていたりする場合には、カスハラ対応へ切り替える必要があります。
そのため、記録では次のような点を整理します。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 主張 | 商品・サービスへの不満、対応への不満、説明要求など |
| 要求内容 | 返金、交換、謝罪、土下座、担当者処分、金銭要求など |
| 要求の変化 | 当初は説明要求だったが、その後返金要求に変わった等 |
| 会社側の説明 | どのような説明をしたか |
| 相手の反応 | 説明後も要求を繰り返したか、言動が強まったか |
要求内容は、できるだけ具体的に残す必要があります。
「謝罪を求められた」だけではなく、どのような謝罪を求められたのか。
「返金を求められた」だけではなく、全額返金なのか、慰謝料的な金銭要求なのか。
「処分を求められた」だけではなく、担当者の異動、解雇、謝罪文の提出など、何を求めていたのか。
このように具体的に残しておくことで、後から会社として判断しやすくなります。
要求内容が社会通念上許容される範囲を超える場合については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→カスハラ【言動の内容編】「要求内容」が社会通念上許容される範囲を超えるのはどんな場合か
顧客等の具体的な言動
カスハラ対応記録で最も重要なのは、顧客等の具体的な言動です。
「暴言を言われた」
「威圧された」
「しつこかった」
「怖かった」
このような記録も大切ですが、それだけでは後から判断しにくい場合があります。
重要なのは、実際に何を言われ、何をされたのかを残すことです。
| 抽象的な記録 | 具体的な記録 |
|---|---|
| 暴言を言われた | 「お前は無能だ」「責任者を出せ」と大声で言われた |
| 威圧された | カウンターを叩き、身を乗り出して発言された |
| しつこかった | 約40分間、同じ返金要求を繰り返された |
| 居座られた | 退去を求めた後も、約30分間店舗内に留まった |
| 脅された | 「SNSに全部書く」「営業できなくしてやる」と言われた |
記録では、「ひどかった」「怖かった」という評価だけでなく、実際に何を言われ、何をされたのかを残す必要があります。
可能であれば、相手の発言はそのままの言葉に近い形で記録します。
ただし、記録の目的は相手を攻撃することではありません。
会社として、何が起きたのかを正確に確認するために、具体的な言動を残すのです。
要求内容が正当であっても、手段・態様が問題となる場合については、こちらの記事で解説しています。
→カスハラ【手段・態様編】正当な要望でもカスハラになるのはどんな場合か
会社側の対応内容
カスハラ対応記録では、顧客等の言動だけでなく、会社側がどのように対応したかも記録しておく必要があります。
後から問題になるのは、相手の発言だけではありません。
会社側が何を説明し、何を謝罪し、何を約束したのかも重要です。
たとえば、次のような項目を残します。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 説明内容 | 返品基準、契約内容、対応方針など |
| 謝罪内容 | 限定的な謝罪か、事実確認前の謝罪か |
| 約束内容 | 何を約束したか、何は約束していないか |
| 引き継ぎ | 何時何分に誰へ引き継いだか |
| 対応終了 | どのような理由で対応を終了したか |
| 外部相談 | 警察、弁護士、本部、総務等への相談有無 |
特に注意したいのは、現場で何を約束したのかです。
その場を収めるために、返金、謝罪、担当者処分、特別対応などを安易に約束してしまうと、後から会社として対応を見直しにくくなることがあります。
そのため、記録には「何を伝えたか」だけでなく、「何は約束していないか」も分かるように残しておくことが重要です。
証拠の有無
記録とあわせて、証拠の有無も確認しておく必要があります。
カスハラ対応では、防犯カメラ、通話録音、メール、SNS投稿、チャット履歴、写真などが重要な資料になることがあります。
たとえば、次のようなものです。
| 証拠の種類 | 確認する内容 |
|---|---|
| 防犯カメラ | 映像の有無、保存期間、該当時刻 |
| 録音 | 通話録音、ICレコーダー、スマートフォン録音等 |
| メール | 送受信日時、文面、添付ファイル |
| SNS | 投稿内容、URL、スクリーンショット |
| 写真 | 破損物、掲示物、現場状況など |
| 目撃者 | 同席者、他の従業員、警備員など |
特に、防犯カメラや通話録音は保存期間が限られていることがあります。
後から確認しようと思ったときには、すでに上書きされていることもあります。
そのため、カスハラが疑われる事案では、証拠が存在する可能性を早めに確認することが重要です。
なお、録音・録画・個人情報の取扱いについては、社内ルールや関係法令を踏まえ、適切に管理する必要があります。
従業員への影響
カスハラ対応記録では、顧客等の言動だけでなく、対応した従業員にどのような影響があったかも残しておく必要があります。
カスハラは、単なる顧客対応の問題ではありません。
従業員の就業環境に影響する問題です。
そのため、次のような点も記録しておくとよいでしょう。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 心理的影響 | 恐怖、不安、落ち込み、強いストレスなど |
| 身体的影響 | 体調不良、震え、涙、睡眠への影響など |
| 業務への影響 | 接客継続困難、配置変更、早退、休暇など |
| フォロー | 上司面談、勤務配慮、相談窓口案内など |
| 再発防止 | 同一顧客への対応方針、複数名対応など |
「対応して終わり」では不十分です。
対応した従業員がどのような負担を受けたのか。
その後の勤務に影響が出ていないか。
上司や会社としてどのようなフォローをしたのか。
これらも記録に残しておくことで、従業員保護につながります。
記録で最も重要なのは「事実」と「評価」を分けること
「怖かった」「ひどかった」だけでは判断できない
カスハラ対応記録では、「事実」と「評価」を分けることが非常に重要です。
現場で対応した従業員が「怖かった」と感じたことは重要です。
「ひどい言い方をされた」と感じたことも重要です。
しかし、会社として判断するためには、「何をされたから怖かったのか」「どのような発言がひどかったのか」まで残しておく必要があります。
たとえば、次のように整理します。
- 怖かった
→ カウンターを強く叩き、身を乗り出して発言された - しつこかった
→ 約40分間、同じ返金要求を繰り返された - 威圧的だった
→ 大声で「責任者を出せ」と繰り返し言われた - ひどいことを言われた
→ 「お前は無能だ」など人格を否定する発言があった
「怖かった」という記録は重要です。
しかし、会社として判断するためには、「何をされたから怖かったのか」まで残しておく必要があります。
事実・評価・対応方針を分けて書く
カスハラ対応記録では、事実、評価、対応方針が混ざりやすくなります。
しかし、この3つが混ざったままだと、後から見たときに分かりにくくなります。
そのため、次のように分けて記録すると整理しやすくなります。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 事実 | 実際に起きたこと | 14時10分頃、「全額返金しろ」と大声で要求された |
| 評価 | 会社としての判断 | 要求の繰り返しと威圧的言動があり、カスハラ疑いあり |
| 対応方針 | 今後の対応 | 次回以降は店長対応とし、単独対応を避ける |
記録では、まず事実を残します。
そのうえで、会社としての評価を整理します。
そして、今後の対応方針を決めます。
この順番が重要です。
最初から「悪質なカスハラ」とだけ書いてしまうと、何を根拠にそう判断したのかが分かりにくくなります。
まずは、何が起きたのかを具体的に残す。
そのうえで、会社としてどのように評価し、どう対応するのかを整理する。
この流れで記録を残すことが重要です。
カスハラと正当なクレームの違いについては、こちらの記事で整理しています。
時系列で整理する
カスハラ対応記録では、時系列で整理することも重要です。
カスハラは、最初からカスハラとして始まるとは限りません。
通常の苦情対応から始まり、途中で要求内容や言動がエスカレートすることがあります。
そのため、どの時点で何が起きたのかを時系列で残しておく必要があります。
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 14:00 | 顧客が来店し、商品の不具合について申し出 |
| 14:05 | 担当者が返品基準を説明 |
| 14:10 | 顧客が「全額返金しろ」と大声で要求 |
| 14:20 | 同じ要求を繰り返し、担当者を名指しで非難 |
| 14:30 | 店長へ引き継ぎ |
| 14:45 | 対応終了を告げる |
| 15:00 | 対応者から聞き取り、記録作成 |
このように記録しておくと、後から会社として流れを確認しやすくなります。
どの段階までは通常のクレーム対応だったのか。
どの段階でカスハラ対応へ切り替えるべきだったのか。
どの段階で責任者対応にすべきだったのか。
時系列で整理することで、事案の検証や再発防止にもつながります。
記録を残すときに注意すべきこと
相手を決めつける表現を避ける
カスハラ対応記録では、相手を決めつける表現は避けるべきです。
たとえば、次のような表現です。
- 悪質なクレーマー
- 異常な客
- 頭がおかしい
- どうしようもない人
- 完全なカスハラ
このような言葉は、記録として適切とはいえません。
記録では、相手を評価する言葉よりも、相手が実際に何を言い、何をしたのかを残すことが重要です。
| 避けたい表現 | 置き換え例 |
|---|---|
| 悪質なクレーマー | 同一内容の要求を約40分間繰り返した |
| 異常な客 | 大声で発言し、カウンターを叩く行為があった |
| 完全なカスハラ | 暴言・長時間拘束があり、カスハラ該当性を検討 |
| しつこい | 退去を求めた後も店舗内に留まり続けた |
記録は、後から第三者が見る可能性があります。
会社内部だけでなく、外部専門家へ相談する場合や、後日の説明資料になる場合もあります。
そのため、感情的な表現ではなく、具体的な事実を中心に残すことが重要です。
記録はできるだけ早く作成する
カスハラ対応記録は、記憶が新しいうちに作成することが重要です。
時間が経つほど、発言の順番や具体的な言葉は曖昧になります。
対応直後は、担当者も疲れているかもしれません。
できれば早く忘れたいと思うかもしれません。
しかし、記録を後回しにすると、重要な事実が抜け落ちるおそれがあります。
特に、次のような点は時間が経つと曖昧になりやすいです。
- 相手の具体的な発言
- 発言の順番
- 要求内容の変化
- 対応開始時刻・終了時刻
- こちらが説明した内容
- 責任者へ引き継いだ時刻
- 証拠の有無
そのため、できるだけ対応直後にメモを残し、その日のうちに記録として整理することが望ましいです。
厚生労働省のマニュアルでも、現場対応者が事実関係を時系列で整理して報告することが望ましいとされています。
記録は、早ければ早いほど正確になります。
共有範囲と保管方法を決めておく
カスハラ対応記録は、作成して終わりではありません。
誰が確認するのか。
どこに保管するのか。
どの範囲で共有するのか。
どのくらいの期間保管するのか。
これらもあらかじめ決めておく必要があります。
カスハラ対応記録には、顧客等の情報や従業員の心身への影響など、慎重に扱うべき情報が含まれます。
そのため、誰でも見られる場所に置くべきではありません。
共有範囲は、必要な範囲に限定する必要があります。
たとえば、次のような運用が考えられます。
- 現場責任者が一次確認する
- 必要に応じて本部・総務・人事へ共有する
- 重大事案は経営層へ報告する
- 外部専門家に相談する場合は、必要な範囲で資料を整理する
- 個人情報を含む記録は、閲覧権限を限定する
- 保管場所と保管期間を決めておく
記録を残すことは重要ですが、記録の扱い方も同じくらい重要です。
適切に管理されていない記録は、別のトラブルにつながるおそれがあります。
記録様式を整えておくと現場が迷わない
自由記述だけにしない
カスハラ対応記録を現場に任せる場合、自由記述だけでは記録の質にばらつきが出ます。
ある人は発言を詳しく書く。
ある人は自分の感想を中心に書く。
ある人は対応経過だけを書く。
ある人はほとんど記録を残さない。
このような状態では、会社として事案を比較したり、対応方針を判断したりすることが難しくなります。
記録様式がないまま「何かあれば記録してください」と言っても、現場は何を書けばよいか迷います。
そのため、最低限記録すべき項目をあらかじめ様式化しておくことが重要です。
様式があれば、現場担当者は何を確認し、何を書けばよいか分かりやすくなります。
会社としても、必要な情報を抜け漏れなく把握しやすくなります。
チェック欄と自由記述欄を組み合わせる
記録様式を作る場合、すべてを自由記述にすると現場の負担が大きくなります。
一方で、チェック欄だけでは具体的な事実が残りません。
そのため、チェック欄と自由記述欄を組み合わせることが有効です。
| 区分 | 記録方法 |
|---|---|
| 発生日時・場所 | 記入欄 |
| 顧客の要求内容 | チェック欄+自由記述 |
| 問題となる言動 | チェック欄+自由記述 |
| 会社側の対応 | 自由記述 |
| 証拠の有無 | チェック欄 |
| 従業員への影響 | チェック欄+自由記述 |
| 今後の対応方針 | 自由記述 |
たとえば、問題となる言動については、次のようなチェック欄を設けることが考えられます。
- 暴言
- 威圧
- 長時間拘束
- 繰り返し要求
- 退去拒否
- 身体的接触
- 物を叩く・壊す
- SNS投稿・拡散の示唆
- 担当者個人への攻撃
そのうえで、具体的に何を言われたのか、何をされたのかを自由記述で残します。
記録様式は、細かすぎても使われません。
一方で、簡単すぎると後から判断できません。
現場が書きやすく、会社が判断しやすい形にすることが重要です。
同一人物・同一店舗での繰り返しを把握する
カスハラ対応記録は、一件ごとの対応だけでなく、同一人物による繰り返しや、同一店舗での発生傾向を把握するためにも活用できます。
たとえば、次のような点です。
- 同じ顧客から繰り返し要求を受けていないか
- 同じ店舗で似たような事案が多発していないか
- 特定の時間帯にトラブルが集中していないか
- 特定の従業員に対応が偏っていないか
- 同じ内容の要求が複数回続いていないか
個別の対応記録とは別に、事案管理台帳を作成しておくと、同一人物による繰り返しや、店舗ごとの傾向を把握しやすくなります。
カスハラ対応は、単発の事案処理だけで終わらせるべきではありません。
記録を蓄積することで、会社としてリスクの傾向を把握し、再発防止につなげることができます。
カスハラ対応記録を会社の判断に活かす
カスハラ該当性の判断に使う
カスハラ対応記録は、カスハラ該当性を判断する材料になります。
判断する際には、次のような点を確認します。
- 要求内容が妥当か
- 手段・態様が社会通念上相当な範囲か
- 暴言、威圧、長時間拘束などがあるか
- 従業員の就業環境に影響があるか
- 同じ要求が繰り返されているか
記録があることで、「嫌な思いをした」という感覚だけではなく、要求内容、手段・態様、従業員への影響を踏まえて、会社として判断しやすくなります。
逆に、記録がなければ、カスハラかどうかの判断も曖昧になります。
現場が「カスハラだ」と感じていても、会社として何を根拠に対応を切り替えるのかが分かりにくくなります。
その意味でも、対応記録は、感情を否定するものではなく、感情の背景にある事実を整理するものです。
関連記事はこちらです。
対応終了・出入り禁止・警察相談の判断に使う
記録は、次の対応を決めるためにも必要です。
対応を続けるのか。
対応を終了するのか。
責任者対応に切り替えるのか。
書面回答に切り替えるのか。
警察や弁護士へ相談するのか。
これらを判断するためには、具体的な記録が必要です。
記録がなければ、対応を終了すべきか、責任者対応に切り替えるべきか、外部専門家へ相談すべきかを判断しにくくなります。
たとえば、次のような事案では、記録が特に重要になります。
- 退去を求めても応じない
- 暴力や物損がある
- 脅迫に近い発言がある
- SNSでの拡散を示唆されている
- 同じ要求が何度も繰り返されている
- 担当者個人への執着がある
- 業務に支障が出ている
なお、出入り禁止や法的対応を検討する場合には、事案の内容に応じて、弁護士等の専門家と連携することが重要です。
現場だけで判断せず、会社として記録をもとに対応方針を決める必要があります。
従業員フォローと再発防止に使う
カスハラ対応記録は、顧客対応のためだけではありません。
従業員フォローや再発防止にも活用すべきものです。
たとえば、記録を確認することで、次のような対応を検討できます。
- 対応した従業員への面談
- 勤務上の配慮
- 次回以降の複数名対応
- 担当者の交代
- 管理職への情報共有
- 現場研修の実施
- 対応フローの見直し
- マニュアルの改善
カスハラ対応は、顧客とのやり取りが終われば終了ではありません。
対応した従業員が、その後も安心して働けるようにすることが重要です。
また、同じような事案が繰り返されている場合には、個別対応だけでなく、会社全体の仕組みを見直す必要があります。
記録は、そのための材料になります。
まとめ|記録は会社と従業員を守るための土台
カスハラ対応記録は、単なるメモではありません。
後から会社が事実を確認し、対応方針を判断し、従業員を守るための土台です。
そのためには、相手の印象だけではなく、実際に何を言われ、何を要求され、会社がどのように対応したのかを具体的に残す必要があります。
特に重要なのは、次の点です。
- 発生日時・場所・対応者を残す
- 顧客等の主張・要求内容を残す
- 顧客等の具体的な言動を残す
- 会社側の対応内容を残す
- 証拠の有無を確認する
- 従業員への影響を残す
- 事実と評価を分ける
- 時系列で整理する
- 共有範囲と保管方法を決める
記録は、誰かを責めるためのものではありません。
会社として適切に判断し、従業員を守るために残すものです。
カスハラ対応では、現場の感覚だけに頼るのではなく、後から確認できる形で事実を残すことが重要です。
記録があるからこそ、会社は対応方針を決めることができます。
記録があるからこそ、従業員を守る判断ができます。
そして、記録があるからこそ、同じような事案を繰り返さないための再発防止につなげることができます。
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カスハラ対応記録の整備に不安がある方へ
カスハラ対応では、問題が起きてから記録方法を考えるのではなく、事前に記録様式を整えておくことが重要です。
何を記録するのか。
誰が記録するのか。
どのように報告するのか。
どこまで共有するのか。
これらが曖昧なままだと、後から会社として事実確認や対応判断が難しくなります。
シールド社会保険労務士事務所では、カスハラ対応記録票、相談受付票、事案管理台帳、初動対応フロー、現場研修まで、企業の実情に合わせたカスハラ対策体制の構築を支援しています。
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