社員を注意するときの伝え方|感情的な叱責にしないためのポイント

「注意したつもり」が、トラブルの原因になることがあります
「何度言っても改善しない。」
「つい感情的になってしまった。」
社員を指導する立場であれば、一度はこのような経験があるのではないでしょうか。
注意指導は、会社を運営するうえで欠かせないものです。
しかし、その伝え方を間違えると、社員との信頼関係を損ねるだけでなく、ハラスメントと受け取られる原因にもなります。
最近では、管理職が「注意したいけれど、ハラスメントと言われるのが怖い」と悩むケースも少なくありません。
一方で、注意を避け続ければ、問題行動は改善されず、職場全体に悪影響を及ぼします。
つまり、会社に求められるのは「注意するか、しないか」ではなく、適切な方法で注意することです。
注意する目的は「叱ること」ではありません
社員を注意するとき、多くの人が勘違いしていることがあります。
それは、「注意=叱ること」だと考えてしまうことです。
しかし、本来の注意指導の目的は、社員を責めることではありません。
目的は、問題となっている行動を改善し、本人が同じことを繰り返さないよう支援することです。
例えば、
- 遅刻が多い社員であれば、時間を守れるようになること
- 報告が遅い社員であれば、適切なタイミングで報告できるようになること
- 協調性に課題がある社員であれば、周囲と円滑に仕事ができるようになること
が、本来のゴールです。
「怒ること」自体が目的ではありません。
感情的な叱責は、問題を解決しない
問題が続くと、どうしても感情が先に出てしまうことがあります。
「何回言えば分かるんだ。」
「もう社会人失格だ。」
「やる気がないなら辞めてもらう。」
その場では言いたくなる気持ちも理解できます。
しかし、このような言葉で社員が前向きに改善することは、多くありません。
むしろ、
- 萎縮して何も話さなくなる
- 会社への不信感を持つ
- 「人格を否定された」と感じる
- ハラスメントを訴える
など、新たな問題につながることがあります。
私は企業でハラスメント対応や社員面談を担当してきましたが、問題が大きくなったケースの多くは、「何を注意したか」ではなく、「どのように伝えたか」が原因でした。
私が面談で最も意識していること
私は社員への面談やヒアリングを行う際、最初から結論を決めつけることはありません。
まず確認するのは、「何が起きたのか」という事実です。
そして、本人の話を最後まで聞きます。
もちろん、問題行動を正当化するためではありません。
本人の認識や背景を理解しなければ、本当の原因が見えてこないからです。
元刑事として事情聴取を行っていた頃も、最初から「あなたが悪い」と決めつけて話を進めることはありませんでした。
事実を確認し、相手の説明を聞き、そのうえで客観的に判断する。
この姿勢は、企業の社員面談でも変わりません。
社員への注意指導も同じです。
一方的に叱責するのではなく、事実を確認し、改善につながる対話を行うことが、会社にとっても社員にとっても良い結果につながります。
「伝え方」が会社への信頼を左右する
社員は、注意された内容だけで会社を評価するわけではありません。
「どのように話を聞いてくれたか」
「自分の説明を受け止めてもらえたか」
「改善の機会を与えてもらえたか」
こうした対応全体を見ています。
だからこそ、管理職には冷静な対応が求められます。
注意指導とは、社員を追い詰めるためのものではありません。
会社のルールや期待する行動を共有し、社員が改善できるよう支援するための重要なコミュニケーションです。
注意指導は準備でほぼ決まる
社員への注意指導というと、「何を話すか」に意識が向きがちです。
しかし、実際には面談が始まる前の準備が非常に重要です。
準備不足のまま面談を始めると、
- 話があちこちに飛ぶ
- 感情的になってしまう
- 本来伝えたいことが伝わらない
- 社員も納得できない
という結果になりやすくなります。
反対に、事前に整理しておけば、冷静に話を進めることができます。
注意指導の前に確認したいチェックリスト
注意指導は、その場の思いつきで行うものではありません。
面談を始める前に、次のポイントを確認しておきましょう。
注意指導前チェックリスト
✅ 問題となる事実を具体的に整理している
✅ 日時や状況など客観的な記録がある
✅ 他の社員からの情報だけで判断していない
✅ 本人の話を聞く時間を確保している
✅ 改善してほしい行動を明確にしている
✅ 面談後の記録を残す準備をしている
✅ 感情的にならず冷静に話せる状態である
チェックリストの解説
一つでも準備ができていない項目があれば、すぐに注意指導を始めるのではなく、一度立ち止まることをおすすめします。
例えば、事実関係が曖昧なまま注意すると、社員から反論された際に会社として十分な説明ができないことがあります。
また、改善してほしい内容が整理されていなければ、社員も「結局、何を直せばよいのか分からない」と感じてしまいます。
注意指導は、社員を責める場ではありません。
会社として改善を支援するための大切な機会です。
そのためにも、事前の準備を十分に行うことが、適切な注意指導につながります。
まず整理すべきは「事実」
注意指導を行う前に、会社として確認しておくべきことがあります。
例えば、
- いつ問題が起きたのか
- どこで起きたのか
- どのような行動だったのか
- 誰が確認しているのか
- 同じことは過去にもあったのか
これらを曖昧なまま面談を始めるべきではありません。
例えば、
「最近、勤務態度が悪い。」
という伝え方では、本人は何について指摘されているのか分かりません。
一方で、
「6月10日と17日に無断で15分以上遅刻している。」
「7月3日の会議では、上司の業務指示に従わなかった。」
というように具体的な事実を示せば、本人も状況を理解しやすくなります。
私は企業で社内調査やハラスメント対応を行う際にも、まず時系列を整理し、客観的な事実を確認することを大切にしてきました。
注意指導でも、この姿勢は変わりません。
面談は「話す」より「聞く」が重要
注意指導というと、管理職が一方的に話す場だと思われがちです。
しかし、実際には本人の話を聞く時間も同じくらい重要です。
例えば、
「なぜそのような行動になったのか。」
「本人はどう認識しているのか。」
「改善できない事情はあるのか。」
これらを確認せずに、
「会社として困っている。」
だけを伝えても、本当の原因は見えてきません。
もちろん、本人の説明が正当化されるとは限りません。
しかし、会社が本人の話を十分に聞いたという事実は、その後の対応においても重要になります。
人格ではなく「行動」を伝える
注意指導で最も避けたいのは、人格を否定するような表現です。
例えば、
- 「君は責任感がない。」
- 「社会人失格だ。」
- 「やる気が感じられない。」
- 「だから周りから嫌われるんだ。」
このような言葉では、改善すべき行動が伝わりません。
一方で、
- 「報告が予定より2日遅れた。」
- 「会議に10分遅刻した。」
- 「取引先への連絡が行われていなかった。」
というように、具体的な行動を伝えれば、本人も改善すべき点を理解できます。
改善できるのは人格ではなく、行動です。
だからこそ、会社は「人」を否定するのではなく、「行動」を改善するという視点で伝えることが大切です。
管理職が陥りやすい失敗
これまで多くの相談を受けてきた中で、管理職が陥りやすい失敗には共通点があります。
1 他人の評価だけで注意する
「みんなが困っている。」
「他の社員から苦情が出ている。」
これだけでは、本人は納得しにくいものです。
必ず具体的な事実をもとに話を進めましょう。
2 過去の不満を一度に伝える
面談になると、
「あの時もそうだった。」
「去年も注意した。」
と、次々に話を広げてしまうことがあります。
しかし、話題が多すぎると、何を改善すればよいのか分からなくなります。
今回は何について改善を求めるのかを明確にしましょう。
3 結論を急ぐ
「もう改善は無理だ。」
「辞めてもらうしかない。」
このような考えが先にあると、面談は形式的なものになってしまいます。
会社としては、まず改善の可能性を確認する姿勢が大切です。
最後は「会社として期待する行動」を伝える
注意指導の最後は、
「今後どうしてほしいのか。」
を具体的に伝えます。
例えば、
- 遅刻する場合は始業前に連絡する。
- 報告は当日中に行う。
- 業務上の疑問は一人で判断せず相談する。
など、会社が期待する行動を明確にします。
「気を付けてください。」
だけでは、人によって受け取り方が変わります。
改善につながるよう、具体的な行動として伝えることが重要です。
面談後は必ず記録を残す
面談が終わったら、それで終わりではありません。
会社は、
- 面談日時
- 出席者
- 指導内容
- 本人の説明
- 今後の改善事項
を記録として残しておきましょう。
記録は、後から問題になった場合だけでなく、次回の面談やフォローを行う際にも役立ちます。
また、担当者が変わっても、それまでの経緯を正確に引き継ぐことができます。
注意指導は「その後」が重要です
注意指導は、一度話をして終わりではありません。
本当に大切なのは、その後のフォローです。
例えば、
「改善してください。」
と伝えたにもかかわらず、その後何も確認しなければ、社員は「会社は本気ではない」と受け止めるかもしれません。
一方で、定期的に状況を確認し、改善点を評価しながら支援していけば、社員の行動が変わる可能性があります。
注意指導の目的は処分ではありません。
社員が改善し、安心して働ける職場をつくることです。
改善が見られたときは評価する
注意指導というと、「悪いところを指摘すること」だけをイメージしがちです。
しかし、改善が見られたときは、その変化をきちんと伝えることも重要です。
例えば、
「以前より報告が早くなりましたね。」
「遅刻がなくなっています。」
「周囲とのコミュニケーションも改善されています。」
このような声掛けは、社員にとって大きな励みになります。
人は、自分の努力が認められることで、さらに改善しようという意欲が生まれます。
会社として期待する行動を伝えるだけでなく、改善した点を認めることも、管理職に求められる役割です。
改善しない場合は次の対応を検討する
一方で、何度注意指導を行っても改善が見られないケースもあります。
その場合でも、感情的になってはいけません。
会社としては、
- 面談内容
- 指導記録
- 本人の説明
- 改善状況
を整理したうえで、次の対応を検討します。
必要に応じて、
- 指導方法を見直す
- 配置転換を検討する
- 人事部や外部専門家へ相談する
- 懲戒処分や退職勧奨を検討する
といった段階へ進みます。
重要なのは、「改善しないからすぐ処分する」のではなく、これまでの経緯を踏まえて会社として適切に判断することです。
「ハラスメントが怖いから注意できない」は正しくありません
最近は、
「注意するとパワハラと言われそうで怖い。」
という相談を受けることがあります。
しかし、業務上必要な注意指導まで避けてしまうことは、会社にとっても望ましいことではありません。
問題なのは「注意すること」ではなく、「注意の仕方」です。
例えば、
- 事実に基づいているか
- 業務上必要な内容か
- 人格を否定していないか
- 冷静な態度で伝えているか
- 改善を目的としているか
これらを意識していれば、適切な業務指導として行える場面は多くあります。
ハラスメントを恐れて何も言えない職場では、他の社員が不公平感を抱き、職場全体の規律にも影響します。
管理職には、適切に注意する責任もあります。
私が管理職の方へお伝えしていること
私は、管理職研修や個別相談で、次のことをよくお伝えしています。
「相手を変えようとする前に、自分の伝え方を見直してください。」
同じ内容でも、伝え方一つで相手の受け止め方は大きく変わります。
頭ごなしに叱責すれば反発を招きます。
一方で、事実を確認し、改善を期待していることを冷静に伝えれば、社員も前向きに受け止めやすくなります。
もちろん、すべての社員が改善するとは限りません。
それでも会社は、公平で適切な対応を積み重ねることが重要です。
その積み重ねが、職場全体からの信頼につながります。
注意指導を担当者任せにしない
注意指導は、管理職個人の経験や性格に任せるものではありません。
会社として、
- 面談の進め方
- 指導記録の様式
- 注意指導の基準
- フォローの方法
などをあらかじめ整理しておくことが重要です。
担当者によって対応が大きく変われば、社員は「会社として一貫性がない」と感じます。
一方で、会社全体で共通したルールや手順があれば、管理職も安心して注意指導を行うことができます。
まとめ
社員への注意指導は、単に問題行動を指摘する場ではありません。
社員が改善し、職場全体がより良い方向へ進むための大切なコミュニケーションです。
そのためには、
- 感情ではなく事実を伝える
- 人格ではなく行動について話す
- 本人の話にも耳を傾ける
- 改善してほしい内容を具体的に伝える
- 面談後も継続してフォローする
- 指導内容を記録として残す
ことが重要になります。
注意指導の積み重ねは、社員一人の成長だけでなく、会社全体の組織づくりにもつながります。
管理職が安心して注意指導を行える環境を整えることも、会社に求められる大切な役割です。
注意指導の進め方でお悩みの方へ
「どこまで注意してよいのか分からない」
「感情的にならずに伝える方法を知りたい」
「問題社員への対応が適切か判断に迷っている」
このようなお悩みは、多くの経営者や管理職が抱えています。
シールド社会保険労務士事務所では、元刑事として培った事実確認力と、企業での人事労務・ハラスメント対応の実務経験を活かし、注意指導の進め方や問題社員への対応について、会社の状況に応じた実践的な支援を行っています。
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