問題社員との面談で聞くべきこと・聞いてはいけないこと|会社が確認すべきポイントを解説

面談は会社の判断を支えるもの
遅刻や欠勤を繰り返す社員、業務命令に従わない社員、周囲とのトラブルが絶えない社員など、問題行動が見られた場合、会社は本人と面談を行うことになります。
しかし、実際には、
- 「何を聞けばよいのか分からない」
- 「厳しく聞かないと本当のことを話してくれないのではないか」
- 「ハラスメントと言われないか心配だ」
と悩む経営者や管理職も少なくありません。
その結果、十分な事実確認ができないまま判断してしまったり、反対に感情的な面談になってしまったりするケースもあります。
問題社員との面談は、会社にとって非常に重要な機会です。
なぜなら、その面談で確認した内容が、その後の注意指導や配置転換、懲戒処分などの判断の土台になるからです。
だからこそ、面談では「何を聞くか」だけでなく、「どのような姿勢で聞くか」も重要になります。
問題社員への対応は、いきなり懲戒処分を行うものではありません。
まずは全体の流れを知りたい方は、
関連記事「問題社員への対応手順|いきなり退職勧奨や解雇をしてはいけない理由」をご覧ください。
面談の目的
問題社員との面談というと、
「問題行動を認めさせる場」
「反省させる場」
と思われることがあります。
しかし、本来の目的は違います。
面談は、
会社が適切な判断を行うために必要な事実を確認する場
です。
例えば、
- 本当に会社が認識しているとおりの出来事だったのか
- 本人はどのように認識しているのか
- 誤解や思い込みはないか
- 改善できる可能性はあるのか
こうした点を整理することが、面談の目的です。
最初から結論を決めつけて面談を進めると、本当に確認すべき事実を見落としてしまうことがあります。
その結果、会社として誤った判断をしてしまうリスクもあります。
だからこそ、面談では「問い詰める」のではなく、「確認する」という姿勢が重要です。
元刑事として大切にしていること
私は刑事として事情聴取を行っていた頃から、最初に「犯人だ」と決めつけて話を聞くことはありませんでした。
もちろん、企業での社員面談も同じです。
「この社員が悪いに違いない。」
そう考えて面談を始めると、本人の説明を聞く前に結論ありきのやり取りになってしまいます。
一方で、
「何が起きたのか。」
「本人はどのように認識しているのか。」
という視点で話を聞くと、当初の認識とは異なる事実が見えてくることもあります。
実際に企業でハラスメントや社員対応を行ってきた中でも、「最初の印象」と「面談後に整理した事実」が異なっていたケースは少なくありません。
だから私は、面談とは「相手を追及する時間」ではなく、「会社が正しい判断をするために必要な情報を整理する時間」だと考えています。
面談前のチェックリスト
面談は、その場の思いつきで始めるものではありません。
事前の準備ができているかどうかで、面談の質は大きく変わります。
面談を行う前に、次の項目を確認しましょう。
□ 面談の目的
今回の面談で確認したいことは何でしょうか。
注意指導なのか、事実確認なのか、それとも本人の認識を確認するためなのか。
目的が曖昧なままでは、話があちこちに広がってしまいます。
□ 事実の整理
「勤務態度が悪い」
「協調性がない」
といった抽象的な表現ではなく、
- いつ
- どこで
- 何があったのか
を整理しておくことが大切です。
□ 資料の準備
勤怠記録や業務日報、メール、報告書など、面談の参考になる資料があれば事前に確認しておきましょう。
思い込みではなく、客観的な資料をもとに話を進めることが重要です。
□ 面談記録の準備
面談は話して終わりではありません。
確認した内容や本人の説明、今後の対応方針などを記録として残すことで、その後の注意指導やフォローにも役立ちます。
これらの準備ができていれば、面談中も感情に流されることなく、落ち着いて話を進めることができます。
面談で確認すること
本人の確認
面談では、いきなり会社の考えを伝えるのではなく、まず本人の認識を確認することが大切です。
例えば、
「○月○日にこのような出来事がありましたが、当日の状況を教えてください。」
というように、事実を示したうえで説明を求めます。
最初から、
「どうしてこんなことをしたんですか。」
「自分が悪いと思いませんか。」
と聞いてしまうと、本人は身構えてしまい、本音を話しにくくなることがあります。
まずは、本人がどのように認識しているのかを確認しましょう。
当日の状況
本人の説明を聞く際は、出来事を時系列で確認すると整理しやすくなります。
例えば、
- その日は何時に出勤したのか
- 誰と一緒にいたのか
- どのようなやり取りがあったのか
- その後どのような行動を取ったのか
といったように、順番に確認していきます。
時系列で整理することで、思い込みや記憶違いが見つかることもあります。
また、会社が把握している事実との違いも確認しやすくなります。
行動の理由や背景
事実関係を確認した後は、その行動に至った理由や背景についても聞いてみましょう。
例えば、
「そのように判断した理由は何でしたか。」
「何か困っていることはありましたか。」
という質問です。
もちろん、理由を聞くことは問題行動を正当化するためではありません。
会社として適切な対応を考えるためには、行動だけでなく、その背景も理解することが重要だからです。
たとえば、業務量の偏りや指示の行き違い、健康上の問題などが影響しているケースもあります。
背景を把握することで、注意指導だけでなく、配置や業務分担の見直しなど、より適切な改善策につながることがあります。
面談で確認すること
会社との認識の違い
本人から事情を聞いた後は、会社が把握している事実との違いがないかを確認します。
例えば、
「会社ではこのように認識していますが、この点について何か認識の違いはありますか。」
というように、会社側の認識を押し付けるのではなく、双方の認識をすり合わせる姿勢が大切です。
面談では、「どちらが正しいか」を争うことが目的ではありません。
会社として事実を正確に把握することが目的です。
実際の面談では、本人に悪意がなくても、記憶違いや思い込みによって認識が異なることがあります。
その違いを一つひとつ整理していくことで、より客観的な事実が見えてきます。
改善に向けた考え
事実確認が終わったら、今後について話を進めます。
例えば、
- 今回の出来事についてどのように考えていますか。
- 今後、同じことを繰り返さないためにできることはありますか。
- 会社としてどのような支援があれば改善しやすいと思いますか。
このような質問を通じて、本人の改善意欲や考え方を確認します。
もちろん、ここで形式的な反省だけを求める必要はありません。
重要なのは、本人が問題をどのように受け止め、今後どのように改善しようとしているのかを確認することです。
会社に伝えておきたいこと
面談の最後には、本人から会社へ伝えたいことがないかも確認しましょう。
例えば、
「今回の件以外でも、会社に伝えておきたいことはありますか。」
この一言で、新たな事実が分かることがあります。
例えば、
- 上司とのコミュニケーション不足
- 業務量の偏り
- 他の社員とのトラブル
- 健康上の問題
などが背景にある場合もあります。
もちろん、すべてが会社側の問題とは限りません。
しかし、最後まで話を聞く姿勢を示すことは、本人との信頼関係を築くうえでも大切です。
質問の使い分け
面談では、質問の仕方も重要です。
大きく分けると、質問には2つの方法があります。
| オープンクエスチョン | クローズドクエスチョン |
|---|---|
| 自由に答えてもらう質問 | 「はい」「いいえ」で答えられる質問 |
| 「当日の状況を教えてください。」 | 「遅刻しましたか。」 |
| 「どう考えましたか。」 | 「指示を受けましたか。」 |
どちらか一方だけを使えばよいわけではありません。
最初はオープンクエスチョンで本人の説明を聞き、その後にクローズドクエスチョンで事実を確認していくと、面談がスムーズに進みます。
話を最後まで聞く理由
事情聴取というと、厳しく質問を重ねるイメージを持たれるかもしれません。
しかし、私が刑事時代から意識していたのは、相手の話を最後まで聞くことでした。
話を途中で遮ったり、「それは違うでしょう」と否定したりすると、相手は必要以上に身構えてしまいます。
企業での社員面談も同じです。
会社として確認したいことがあっても、まずは本人の説明を最後まで聞く。
そのうえで、事実との違いを整理していく。
この順番を守ることで、本人も落ち着いて話しやすくなり、結果として会社にとって必要な情報を得やすくなります。
面談で避けたい理由
最初から決めつける
「あなたが悪いのでしょう。」
という姿勢では、本人は防御的になります。
事実確認を行う前に結論を決めつけることは避けましょう。
誘導する質問をする
例えば、
「怒鳴ったんですよね。」
という聞き方ではなく、
「そのとき、どのようなやり取りがありましたか。」
という聞き方が望ましいでしょう。
本人が自由に説明できる質問を心掛けます。
感情的になる
面談では、管理職自身も冷静さを保つ必要があります。
声を荒らげたり、皮肉を言ったりすると、本来の目的である事実確認が難しくなります。
話を途中で遮る
「それはもう分かっています。」
「言い訳はいいです。」
こうした対応では、必要な情報まで聞き漏らしてしまう可能性があります。
最後まで話を聞き、その後に確認事項を整理しましょう。
面談記録を残さない
「覚えているから大丈夫。」
と思っていても、人の記憶は曖昧です。
後日の確認や次回の面談のためにも、面談内容は必ず記録に残しておきましょう。
面談の基本的な流れ
面談は、次のような流れで進めると整理しやすくなります。
問題行動を確認
↓
事実関係を整理
↓
面談の目的を確認
↓
本人から事情を聞く
↓
認識の違いを確認する
↓
改善策を話し合う
↓
面談内容を記録する
↓
今後の対応を判断する
面談は一度で終わるものではありません。
記録を残し、その後のフォローにつなげることが重要です。
面談記録に残す内容
面談が終わったら、できるだけ早く記録を作成しましょう。
最低限、次の内容は残しておくことをおすすめします。
- 面談日時
- 出席者
- 面談の目的
- 確認した事実
- 本人の説明
- 会社が伝えた内容
- 今後の改善事項
- 次回確認日
面談記録は、単なる備忘録ではありません。
会社がどのような対応を行ってきたのかを示す大切な資料です。
また、担当者が変わった場合でも、それまでの経緯を正確に引き継ぐことができます。
面談で聞いてはいけないこと
面談では、会社が事実を確認し、適切な判断を行うために必要な質問をすることが大切です。
一方で、質問の内容や伝え方を誤ると、社員との信頼関係を損ねるだけでなく、面談そのものの目的を見失ってしまうことがあります。
ここでは、面談で避けたい質問や対応について確認していきましょう。
人格を否定する質問
面談で最も避けたいのは、社員の人格を否定するような発言です。
例えば、
- 「社会人として失格だ。」
- 「あなたは責任感がない。」
- 「だから周囲から信頼されない。」
このような発言では、何を改善してほしいのかが伝わりません。
会社が改善を求めるのは人格ではなく、あくまでも業務上の行動です。
「どのような行動に問題があったのか」を具体的に伝えることが重要です。
決めつける質問
面談では、事実を確認する前に結論を決めつけることも避けなければなりません。
例えば、
- 「あなたがやったんですよね。」
- 「嘘をついているんですよね。」
- 「言い訳をしても意味がありません。」
こうした聞き方では、本人も冷静に説明することが難しくなります。
会社が知りたいのは、本人を追い詰めることではなく、「実際に何があったのか」という事実です。
退職を前提とした質問
面談の中で、
- 「辞めるつもりですか。」
- 「退職した方がいいと思いませんか。」
といった発言をすることは慎重であるべきです。
面談は事実確認や改善に向けた話し合いの場です。
十分な検討を行わないまま退職を前提とした話を進めることは、会社にとってもリスクとなる場合があります。
業務と関係のない質問
面談では、必要以上に私生活へ踏み込むことも避けるべきです。
例えば、
- 家庭の事情
- 思想や信条
- 交友関係
- 趣味や私生活
などは、業務との関係がなければ確認する必要はありません。
もちろん、本人から相談があった場合や、健康上の問題など業務との関連がある場合は別ですが、興味本位で質問することは避けましょう。
面談後に行うこと
面談は終わった後の対応も重要です。
話を聞いただけで終わりにしてしまうと、改善につながらないだけでなく、会社として一貫した対応も難しくなります。
面談内容を記録する
面談後は、できるだけ早く記録を作成しましょう。
記録には、
- 面談日時
- 出席者
- 面談の目的
- 確認した事実
- 本人の説明
- 会社から伝えた内容
- 今後の対応方針
などを整理して残します。
記録は、会社がどのような対応を行ってきたのかを示す大切な資料になります。
対応方針を整理する
面談が終わったら、その場で結論を出そうとする必要はありません。
確認した内容を整理したうえで、
- 注意指導を継続するのか
- 配置転換を検討するのか
- 経過を見守るのか
など、会社として対応方針を検討します。
必要に応じて、人事担当者や社会保険労務士、弁護士などの専門家へ相談することも有効です。
改善状況を確認する
一度の面談ですべてが改善するとは限りません。
だからこそ、一定期間後に状況を確認し、必要に応じて再度面談を行うことも重要です。
改善が見られた場合は、その変化をきちんと評価し、本人へ伝えることも忘れてはいけません。
管理職が意識したいこと
管理職は、「問題社員に何を言うか」に意識が向きがちです。
しかし、本当に重要なのは、「会社として適切な判断ができるだけの情報を整理すること」です。
感情的に叱責しても、事実は見えてきません。
一方で、落ち着いて話を聞き、事実と本人の認識を整理することができれば、その後の対応も冷静に判断できます。
面談は、社員を追及するための時間ではありません。
会社が正しい判断を行うための、大切なプロセスなのです。
実務で押さえたいポイント
面談では、「どのような質問をしたか」だけでなく、
「本人がどのように説明し、会社がどのような対応方針を示したか」
まで記録に残すことが重要です。
後日の注意指導や配置転換、懲戒処分などを検討する際にも、面談記録は会社の判断を支える大切な資料になります。
また、担当者が変わった場合でも、それまでの経緯を正確に引き継ぐことができます。
まとめ
問題社員との面談は、社員を問い詰める場ではありません。
会社が適切な判断を行うために、事実を確認し、本人の認識を把握し、今後の改善につなげるための大切な機会です。
そのためには、
- 事実に基づいて質問する
- 本人の話を最後まで聞く
- 人格ではなく行動について確認する
- 面談内容を記録する
- 面談後のフォローを行う
ことが重要になります。
適切な面談を積み重ねることは、一人の社員への対応だけでなく、会社全体の人事リスクを減らし、安心して働ける職場づくりにもつながります。
問題社員との面談でお悩みの方へ
「何を質問すればよいか分からない」
「面談の進め方に自信がない」
「面談後、どのように対応すればよいか判断に迷っている」
このようなお悩みを抱える経営者や管理職は少なくありません。
シールド社会保険労務士事務所では、問題社員への対応について、面談前の準備から質問事項の整理、面談への同席、面談記録の作成、注意指導やその後の対応まで、実務に即した支援を行っています。
一つひとつの事案に応じて、会社が適切な判断を行えるようサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

