ハラスメント発覚後の初動対応|判断と事実認定の原則

2026.01.25
問題発生直後の初動対応を象徴するイメージ

判断を急ぎたくなるのが人の心理

経営者や管理職が従業員からハラスメントの申告を受けた場合、多くの企業は「早く解決したい。」「犯人を処分・注意したい」という気持ちになってしまいます。これはハラスメントが企業にとって負担が大きいからです。最初の判断を誤ると、正しい対応でも不当処分になることがありますので、判断=対応ではないことを知っておく必要があります。

最初に確認することは事実ではない

申告を受けていきなり事実確認を行うと判断を誤ります。

まず整理すべきは申告の構造

まずは申告内容がどのような主張で構成されているのかを整理する必要があります。

申告内容の吟味とは、六何の原則、つまり、一般的に5W1Hと呼ばれているものです。

漢字ではなじみがないと思います。

これは警察用語です。

私には六何の原則の方がなじみがあるのでそちらを使ってしまいました。

5W1Hで評価を入れずに聞く

話を戻しますが、

事実を5W1H(いつ、だれが、何を、どこで、なぜ、どのように)という観点で

丁寧にヒアリングすることが必要となります。

ここで重要なのは「丁寧に」という点です。

評価や推測を交えず、
事実として整理していくことが求められます。

供述の信用性は初期段階では判断できない

被害者であっても

事実を正確に語れないことがあります。

恐怖と混乱が供述に影響する

その理由は恐怖や混乱です。

事案というのは想定されて起こるものではありません。

発生すると恐怖で頭が真っ白になり、混乱します。

自己防衛は誰にでも起こる

あとは自己防衛もあります。

人は誰もが自分に不利な状況は語りたくありません。

これは被害者が悪いという話ではありません。

人は本能的にそのように考えることが多い

ということを知っておく必要があるということです。

被害者を疑うための考え方ではない

ここで述べているのは、被害者を疑うということではありません。

むしろ、被害者を守るためにも、

感情ではなく事実整理をしていく必要があるということです。

初動で整理すべきポイント

初動では、以下の点を整理する必要があります。

5W1Hの具体的な整理項目

  • いつ:発生日時だけではなく、その前後の出来事も聴取
  • 誰が:相手方だけではなく周辺に誰かがいたのか
  • 何を:損傷部位などを詳しく
  • どこで:発生場所だけではなく周辺に何があったのか、位置関係なども聴取
  • なぜ:発生直前の言葉のやりとりも含め聴取
  • どのように:暴行事件なら言葉だけなのか、殴打な右か左か、回数など

客観的資料の収集も不可欠

これに加えて客観的資料も集める必要があります。

  • 有形資料:例えば、メール、チャット、勤怠表、電話の発着信履歴、音声記録など
  • 無形資料:目撃者の供述

関係者が複数いる場合のチェックポイント

全ての供述が合致している必要はありません。

供述が食い違っていても虚偽とは限らない

例として

  • Aさんは1~3を見ていた。
  • Bさんは2だけを見ていた。
  • Cさんは3だけを見ていた。

この場合は3人とも本当のことを言っている可能性があります。

しかし、Dさんは「1は最初からいなかった」と断言した場合は、

AかDの供述は疑わしいことになります。

このようにヒアリングする項目を整理したうえで

矛盾点を確認することが重要です。

判断を急ぐことで招く結果

もし、処分をした結果が事実と異なっていた場合、

不当な処分として係争となる可能性があります。

ハラスメントの申告が出た際、
初動での判断や事実整理を誤ると、
企業にとって大きなリスクとなります。

周辺社員の信頼は一気に低下する

また、他の記事でも書きましたが、

周辺社員からの信頼は一気に低下します。

これは会社からの謝罪文やコメントは

一気にSNSなどで共有される可能性があるからです。

会社側に非があるわけですので

拡散については名誉棄損が成立しにくいケースもあります。

関連記事「なぜハラスメントは繰り返されるのか|組織構造と管理監督者責任」はこちらです。

不信感は別の労働問題を呼び込む

その後も会社の施策について

社員は厳しい目で見てくることになると思います。

特に

  • 残業代
  • 有給管理

などは特にチェックされやすくなります。

仮にきちんと給与計算をやっていたとしても、

問い合わせ対応に時間が取られるというロスが生じます。

判断を誤らない会社が実践していること

丁寧なヒアリングを行い事案の過程を精査すれば、

事実はおのずと見えてきます。

調査は現場主義では行わない

調査は現場主導で行わないことです。

現場に関わっている人は普段から現場との人間関係ができています。

そのため

  • 通常時の勤務態度
  • 日頃の人間関係

が調査時に影響してしまうことがあります。

勤務と調査は別です。

調査は冷静な第三者が行う

勤務態度の良い人でも

魔が差して不適切なことをしてしまう可能性もあります。

調査に感情が入ると間違いなく公平な調査はできません。

調査は冷静な第三者が行うこと。

そして、事案発生時のフローについても作成し

周知しておくことが重要です。

関連記事「ハラスメント調査が必要になる前にやるべきこと|管理監督者教育の重要性」はこちら

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刑事15年・人事労務10年の経験を融合。「刑事の眼」と「実務目線」を併せ持つ社労士として、ハラスメント等の組織トラブル解決を専門としています。

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